どの投資信託を購入しようか調べていると、『信託報酬』という手数料をちょくちょく見かけます。
投資信託を保有すると必ず発生するコストであるため、気にして購入する方も多いのでは。
でも手数料は『信託報酬』だけではなく、実は他にも存在することをご存じですか。
大きく分けて3つの手数料、『販売手数料』、『運用管理費』、『信託財産保留額』があります。
3つの中に信託報酬が無いけど?
よく話題になる信託報酬は『運用管理費』に含まれます。
これだけ手数料があるのに、なぜ『信託報酬』だけを皆さん気にしているのでしょうか。
ここでは3つの手数料がどういうものなのかと、『信託報酬』だけを気にしていれば良い理由などを少し深堀します。
投資信託の3つの手数料
先ほども説明した通り、大きく分けて3つの手数料が存在します。
まずはこの3つを表にまとめると次のような違いがあります。
手数料 | 支払いタイミング | 支払額(%) | 補足 |
---|---|---|---|
販売手数料 | 購入時 | 0~3% | 0円(ノーロード)が多数 |
運用管理費 (信託報酬など) | 保有中 | 0.06~3% | インデックス投資信託は安い |
信託財産留保額 | 解約時(売却時) | 0~0.3% | 0円が多数 |
では簡単にですが、順に解説していきましょう。
買うときに払う『販売手数料』
投資信託を購入するときに発生する費用です。
『購入時手数料』とも言ったりするもので、購入時に購入金額に対して〇%というように支払額が指定されます。
証券会社や商品によって異なりますが、おおよそ0~3%で設定されています。
手数料が0円の投資信託は「ノーロード」と呼ばれ、「ノーロード」の商品も多く存在します。
持っている間に払う『運用管理費』
投資信託を保有中に発生する管理費用で、年率何%と決めらた額が、保有財産から日割り計算で毎日差し引かれます。
運用管理費にはよく聞く『信託報酬』の他に、『監査報酬』や『売買委託手数料』などの費用が存在します。
商品によって異なり、年率0.06~3%で設定されています。
3つの手数料のうちこの手数料には0円というものが存在せず、必ず支払いが発生します。
売るときに払う『信託財産留保額』
投資信託を解約(売却)するときに発生する費用です。
証券会社や商品によって異なりますが、おおよそ0~0.3%で設定されいて、0円という投資信託も多く存在しています。
投資信託を売るときに株式や債券を現金化するコストが発生しますが、それを投資信託保有者(解約者以外の他の人達)に負担させるような不公平とならないようにするため、解約者が支払う費用です。
信託財産留保額は、販売/運用会社や信託銀行の利益では無いため、厳密に言うと手数料ではありません。
コストの整理と実際の商品例
SBI証券や楽天証券を例に、いくつかの代表的なインデックス投資信託の手数料は次のようになっています。
商品 | 購入手数料 | 運用管理費(信託報酬等) | 信託財産留保額 | |||
SBI証券 | 楽天証券 | SBI証券 | 楽天証券 | SBI証券 | 楽天証券 | |
eMAXIS Slim全世界株式(オールカントリ) | 0 | 0 | 0.05775% | 0.05775% | 0 | 0 |
楽天・全米株式インデックス・ファンド | 0 | 0 | 0.162% | 0.162% | 0 | 0 |
<購入・換金手数料なし> ニッセイ外国株式インデックスファンド | 0 | 0 | 0.09889% | 0.09889% | 0 | 0 |
3つの手数料『販売手数料』、『運用管理費』、『信託財産保留額』について整理すると、
手数料について整理
- 証券会社や商品にもよるが、優良インデックス投資信託の多くは販売手数料と信託財産留保額は0円。
- 運用管理費の大部分の費用は信託報酬で、保有中に必ず支払いが発生する。
- アクティブ投資信託に比べインデックス投資信託は信託報酬が非常に安い。
なので基本的には、投資信託を購入する際に気にする手数料は、『信託報酬』だけで良いということになります。
コストが低いのは、それを扱う証券会社の自信の表れです。
また評価を受け世間に広まり、需要が高まることでもコストが下がります。
「隠れコスト」と「実質コスト」
信託報酬のみを見れば良いと説明したばかりで申し訳ないのですが、実は他にも手数料が潜んでいました。
それが『隠れコスト』です。
- 信託報酬とは別にかかる「その他の費用・手数料」
- 事前に確定していない費用であるため『目論見書』に記載されず、『運用報告書』で分かる
- 期末にならないと確定しないため新しい商品では手数料が不明
『隠れコスト』と『信託報酬』を足し合わせた手数料を『実質コスト』と言います。
この『実質コスト』が投資信託を保有すると発生する全ての手数料です。
手数料を見比べて低コストな投資信託を選びたい場合は、この『実質コスト』で判断する必要があります。
実質コスト = 信託報酬 + 隠れコスト
『実質コスト』は「しんたろうのお金のはなし」さんの記事にあるので、商品を選ぶときの参考にしましょう。
前の表で挙げた代表的なインデックス投資信託について、実質コストを書き出すと次のようになります。
商品 | 信託報酬 | 実質コスト |
eMAXIS Slim全世界株式(オールカントリ) | 0.05775% | 0.111% |
楽天・全米株式インデックス・ファンド | 0.162% | 0.186% |
<購入・換金手数料なし> ニッセイ外国株式インデックスファンド | 0.09889% | 0.126% |
信託報酬だけでみると、3つのうちではeMAXIS Slim全世界株式(オールカントリ)の手数料がダントツの最安値と思われがちですが、実質コストを確認することで実はそうでもないことが分かります。
商品を選ぶ条件に手数料も踏まえて考えたいという方は、実質コストをしっかり確認しましょう。
まとめ
大きく分けると3つの手数料がありますが、インデックス投資信託の場合はそのうち2つがほぼ0円となるので、信託報酬を見れば良いことになります。
ただし漏れなく正確に比較するには『実質コスト』で考える必要があります。
その程度の手数料なら
気にならないけど~
手数料が安いには変わりないので、そこまで気にしないというのも1つです。
ただし保有財産から引かれる手数料であるため、長期的な複利効果を考慮すると利益への影響はそれなりにあります。
まず分かりやすい信託報酬で目星をつけて、購入前に実質コストを確認して購入するのが良いでしょう。
信託報酬のみで判断してもらっても良いですが、示したように『隠れコスト』でその商品のコストが入れ替わることもありますのでご注意下さい。