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週5日のうち1日分の給与の行方|税金計算例から見える大きな社会保険料の割合

収入により違いはありますが、おおよそ平均で考えると働いて得た収入の約20%が税金になるという話を聞いたことがあるでしょうか。

もし本当なら、言い換えると「週5日のうち1日は税金のために働いている」ことになります。

まる1日は、

お国のために働いてる~~

1日だけ手加減するか

『20%』より『まる1日』の方がインパクトが強烈!

意味は同じなのに、表現って恐ろしですね。

ですが本当にそうなんでしょうか?

結論から言うと、もちろん個人の収入によりますが、税金はそれほど払っていません

日本全国の平均年収460万円で考えると、ざっくりですが税金は約6.5%の30万円かそれより少ないくらいです。

思ったより、税金って少ない?

でも税金はそれほど引かれていませんが、手取りで考えるとほぼ皆さん収入の2割かそれより多い額がひかれています

その理由は税金とは別に、社会保険料を支払っているからです。

武蔵コーポレーション㈱さんの「【年収別の税金一覧】年収から税金が引かれるメカニズムを徹底解説」を参考。

では実際どのくらい税金を取られて、どういう具合に手取りが8割以下になるのかを、具体的な計算例で解明していきます。

税金の計算は複雑で、私もいつも途中で挫折してしまいます。

できるだけ簡単に説明したいと思いますので、一緒に計算して学んでいきましょう。

まず次の表を見たことがあるという人もいると思いますが、課税所得金額に対する税金の割合です。

表1 課税所得金額に対する所得税率

課税所得金額税率%控除
195万円以下0円
195万円を超え330万円以下1097,500円
330万円を超え695万円以下20427,500円
695万円を超え900万円以下23636,000円
900万円を超え1800万円以下331,536,000円
1800万円を超え4000万円以下402,796,000円
4000万円超454,796,000円

この表を見て次のような計算をしそうですが、これは間違いです。

税金の計算(間違い例)

年収500万円の人の税金

500万円 ✕ 税率20% - 42. 75

= 58.25万円

税金として約58万円引かれる → ✖

そんなの知ってるよ

お詳しい。

失礼しました。

よく聞く「税金は年収のうちの2割」「お金持ちの収入の半分が税金」などの情報だけを頼りに、このように間違った計算をしてしまいます。

私もそういう勘違いをしたことがあったので、例を出してみました。

税金は下図①~④の4段階の長~い道のりを経て計算されます。

図1 税金計算の順序

引用:武蔵コーポレーション株式会社

先の計算で何がおかしいかというと、簡単には2点です。

  • 表1を使用するのは、計算順序③のとき
  • 「課税所得金額」年収ではない。
    (年収 ≠ 課税所得金額。課税所得金額は年収から色んな控除額を引いたもの)

少し話が脱線してしまいましたが、頭を整理するためもう少しだけ補足を。

税金の計算をする前に整理しておいた方が良いのが、そこに出てくる言葉の意味です。

言葉の理解によって、途中で何を計算していたか分からなくなり、大混乱となります。

ここでは4つの言葉「給与収入」、「所得金額」、「課税所得金額」、「手取り」を説明します。ご存じの方は飛ばして下さい

図1を見ながら確認してみて下さい。

収入(給与収入)

給与収入とは、税金を引く前の『会社から出たお金』そのままの数字を指します。

月給、ボーナスや手当などを全て合算した金額で、一般的に「年収」「収入金額」とも呼ばれます。図1の税金の計算では「必要経費(給与所得控除額)」を引く前の金額。

ここでは馴染みやすい「年収」で説明していきます。

なお図1の①にある「給与所得控除額」とはサラリーマンの『経費』を想定して、給与収入に応じて金額を差し引くものです。

所得金額

間違いやすいですが、所得金額は先の「年収(給与収入)」から「必要経費(給与所得控除額)」を引いた金額を指します。

ただ厳密に言うと所得金額は、サラリーマンが得るものを「給与所得」、個人事業主が得るものを「事業所得」というように区分されます。

なのでサラリーマンの場合は、「所得金額」と言ったり「給与所得」と言ったりします。

課税所得金額

税率を掛ける前の金額です。

所得金額から「所得控除」を引いた金額を指します。先の所得金額と混同しやすいので注意が必要です

手取り

手取りは「税金」や「保険料」などを差し引いたあとの金額を指します。

一般に給料日に受け取るお馴染みの金額になります。

初めに説明した「年収(給与収入」と勘違いしやすいのでご注意下さい。

それではやっとですが計算に入っていきましょう。

会社勤めの次のような方を想定して計算していきます。

サラリーさんXマン(35歳)
年収:500万円(賞与含む)
家族:妻(専業主婦)1人
社会保険料:60万円
住宅ローン:3000万円

※以下タイトルの頭文字①~④は、図1の番号に合わせています。

図1 税金計算の順序

引用:武蔵コーポレーション株式会社

まずは所得金額を計算します。所得金額とは

(年収(給与収入))-(給与所得控除額)で計算します。

ここでは年収500万円で計算していきます。

表2 給与所得控除額

給与等の収入金額(年収)
(給与所得の源泉徴収票の支払い金額)
給与所得控除額
162.5万円以下550,000円
162.5万円を超え180万円以下収入金額 ✕ 40%
- 100,000円
180万円を超え360万円以下収入金額 ✕ 30%
+ 80,000円
360万円を超え660万円以下収入金額 ✕ 20%
+ 440,000円
660万円を超え850万円以下収入金額 ✕ 10%
+ 1,100,000円
850万円を超え1,950,000円
(上限)
4000万円超4,796,000円

上の表2から年収500万円は給与所得控除額「収入金額 ✕ 20% + 440,000円」が適用されるため、

(給与所得控除額)= 500✕20%+44

         = 144 万円

(所得金額)=(年収)-(給与所得控除額)

      = 500 - 144

      = 356 万円

次に税率を掛ける前の課税所得金額を計算します。課税所得金額は

(所得金額)-(所得控除)で計算します。

ここで引く「所得控除」とは、税金(所得税/住民税)の負担を減らしてくれるもので次のようなものがあります。

基礎控除配偶者控除配偶者特別控除
扶養控除障害者控除寡婦控除
勤労学生控除社会保険料控除生命保険料控除
地震保険料控除小規模企業
共済等掛金控除
医療費控除
雑損控除寄付金控除ひとり親控除

ここでは基礎控除、配偶者控除と社会保険料控除の3つだけ考えます。(これら以外の控除については、下記の参考資料で確認できます)

社会保険料控除は年収500万円の4月~6月の平均給与(標準報酬月額)35万円(賞与は除く)として考えます。

  • 基礎控除   :【所得税】48万円
            【住民税】43万円
  • 配偶者控除  : 38万円 (配偶者の合計所得48万円超95万円以下の場合)
  • 社会保険料控除: 60万円 (健康保険料、厚生年金保険料、介護保険料の合計)

(参考資料:ZEIMO「所得控除とは?種類と控除金額を一覧でわかりやすく解説」
(参考資料:free株式会社「社会保険料まとめ!計算方法から社会保険控除まで徹底解説」

所得税控除; 48(基礎控除)+38(配偶者控除)+60(社会保険料)=146

住民税控除; 43(基礎控除)+38(配偶者控除)+60(社会保険料)=141

所得控除の合計は146万(住民税の所得控除合計は141万円)。

先に求めた所得金額356万円からこれらを引くと、

(課税所得金額)=(所得金額)-(所得控除)

        =356- 146

        =210 万円

(住民税の課税所得金額は215万円)

ここで重要となるのが社会保険料控除です。

他の控除とは意味合いが異なり、既に別で社会保険料を支払っているため、その支払った全額をここでは控除するというものです。

ですので会社から支払われた年収から毎月引かれています。

ここの計算例では年間60万円と、非常に大きい額となっています。

税額を計算します。税額は課税所得金額に税率を掛けて計算します。

税率は累進課税制度という方式が取られています。

ここでやっと最初に出てきた表1を使用します。

表1 課税所得金額に対する所得税率

課税所得金額税率%控除
195万円以下0円
195万円を超え330万円以下1097,500円
330万円を超え695万円以下20427,500円
695万円を超え900万円以下23636,000円
900万円を超え1800万円以下331,536,000円
1800万円を超え4000万円以下402,796,000円
4000万円超454,796,000円

先に計算した所得税課税所得金額は「210万円」なので、表1より税率は10%、控除は9万7,500円となり、

(課税所得金額)=(課税所得金額)✖(税率)-(控除)

        =210 ✕ 10% - 9.75

        =11.25 万円

これに更に令和19年まで特別復興所得税2.1%が上乗せで徴収されますので、

(所得税額)= 11.25 ✕ 102.1%

      ≒ 11.5 万円

ここで求めたのは所得税です。

もう一方、住民税というものがあります。

住民税の税率は課税所得金額に対する10%と、それにプラスして課税所得金額に関係なく一律に払う均等割り5000円があります。

なお税率10%の内訳は、市区町村民税6%、都道府県税4%です。

先に計算した住民税の課税所得金額は「215万円」なので、

(住民税額)= (課税所得金額)✕ (税率)+(均等割)

      =215 ✕ 10% + 0.5

      = 22 万円

年収800万円超くらいから所得税>住民税となります。

所得税11.5万円と住民税22万円なので総額は、

(税額)=11.5+22=33.5 万円

やっと計算できた~

ふう~長かった

いやいや、まだ終わってません

これで終わりではありません。次に行ってみよう!

ようやくこの最後の計算でおさめる税金の額が出てきます。

ここでは求めた税額から税額控除を引いて最終的に「おさめる税金」を計算します

ただし税額控除が無い人は控除額0円ですので、前の計算③で終了です。

税額控除の一部ですが、次のような場合に控除されることがあります。

  • 寄付したとき
  • 自然災害や盗難、横領の被害に遭ったとき
  • 株式投資などによる配当金を受け取ったとき
  • 住宅をローンで購入したとき
  • 株や不動産を海外で売却したとき(二重課税防止)

ただしこれらの控除は、原則として確定申告が必要となります。

ここでは住宅ローン控除のみある前提で説明します。

令和5年に居住して借入金年末残高が3000万円とすると、年間最大控除額は21万円(=3000✕0.7%)。

住宅ローン控除の補足

住宅ローン控除はまずは所得税から控除されます。

所得税から控除しきれない場合、残りは住民税から控除されます。

ただし住民税からは控除上限額136,500円(購入時消費税8%以上の場合)があります。

先に求めた所得税額11.5万円、住民税額22万円より

(所得税額)-(住宅ローン控除額)

=11.5-21= -9.5

(住民税控除上限額)13.65>9.5より

(おさめる税金の額)= (住民税額)- 9.5

          = 22-9.5

           =12.5 万円

よって年収500万円のⅩマンがおさめる税金の額は、

所得税が0円、
住民税が12.5万円となります。

先の税金の計算をまとめて整理すると、

サラリーさんXマン(35歳)の税金の計算
年収:500万円(賞与含む)
家族:妻(専業主婦)1人
社会保険料:60万円
住宅ローン:3000万円
①年収:500万円(賞与含む)
給与所得控除 144万円
② 所得金額:356万円
所得控除:146万円
③ 課税所得金額:【所得税】210万円
        【住民税】215万円
【所得税】
税率10%(控除額
97,500円)
特別復興所得税2.1%
【住民税】
税率10%

+均等割り5000円
④所得税額:11.5万円
  住民税額:22万円
住宅ローン控除:21万円
⑤おさめる税金の額:
 所得税0円、住民税12.5万円

ということで支払う税金は12万5000円となります。

本記事のタイトルは「週5日のうち1日は税金のために働いてる?」ですが、実際、税金はそこまで支払っていませんでした

では何で引かれて手取りが年収の8割以下になっていたかというと、その原因は「社会保険料」にありました。

先の計算でもしらっと出てきますが社会保険料に「60万円」を支払っています。

武蔵コーポレーション㈱さんの「【年収別の税金一覧】年収から税金が引かれるメカニズムを徹底解説」を参考にして下さい。(※条件の違いにより今回の計算結果とは値が異なっています)

参考記事の『手取り早見表』によると、控除額にもよりますが(税金+社会保険料)を支払うことで手取りが約8割以下なっています。

結論的に年収の5分の1は引かれ、『まるっと1日が社会貢献』に役立てられています。

またこの表を見ると、年収1200万円までは社会保険料>所得税ですが、それ以降は所得税や住民税が上回ってきます。

更に年収が増えると、社会保険料とは比較にならないくらい税金が恐ろしいことになっていきます。

私たちには関係ない額だけど~

本当に半分になってる~

一方、今回の計算で『控除』が適用されれば、けっこう税金が安くなるかもしれないということも分かりました。

特に計算④の税額控除は税額からそのまま引かれるため、所得控除に比べると減額効果は非常に大きくなります。

ただし多くは、先に何かの支払いをした後に発生する控除のため、節約という点ではお得感は小さいです。

あと個人事業主に比べ、サラリーマンが日常で利用できる節税対策は扶養控除医療費控除住宅ローン控除など限定的です

ただ該当するのであれば確実に節税できますので、自分の税金について確定申告も含め、もう1度見直してみてはどうでしょうか。