企業価値を表すと言われる株価。
証券取引所で売買され、日々、株価は変動していきます。
企業はこの株価や株主を意識し、株価が上がるように、常に発展する努力をしています。
でもこここで疑問です。株価が上昇することで、企業に利益としてお金が入るのでしょうか。
答えはNOです。株価が上昇したからと言って、その企業にお金は一切入ってきません。
じゃあなんで、
企業は株価を気にするの?
なぜ企業は株価を上げることを意識して、そんなに努力しているのでしょうか。
そこには株価が上昇することで得られる企業側のメリットが存在するからです。具体的には、
- 宣伝効果
- ブランド価値の向上
- 社会的信用度の向上
- 信金調達の容易化
- 優秀な人材の確保
- 従業員のモチベーションアップ
- M&Aとして注目
株価上昇によるメリットを株主側目線と企業側目線で解説していきます。
株主目線のメリット
まずは株価が上昇することで得られる、株主のメリットについて簡単にお話します。
こちらはすでに皆さんも実感している内容だと思いますので、さらっと解説します。
資産価値の増加
株価が上昇すると、株式を保有する株主の資産が増加します。
また株価は未来の企業価値を反映しているため、株価の上昇により、今後の資産増加への期待も膨らみます。
投資意欲を刺激
株価が上昇するということは、その企業が投資家から評価されていることを示します。
なので株価が上昇すれば、今までその企業に注目していなかった投資家の目にも触れ、興味を持たれることによって、更に株価が上昇する可能性が生まれます。
ただ本来、株価は企業の利益に基づいてその価値を決めるべきものですが、投資家の過剰な期待や思惑によって、利益とは関係なく大きく上昇するものもあるので注意が必要です。
配当金の増加
多くの企業は、利益が出た場合に株主に配当金を支払います。
株価が上昇すると、企業の業績が良いことが示されるため、配当金額が増加することが期待されます。
ただ配当金は、企業の利益を株主に還元するのが一般的なため、株価の上昇が直接配当金を増やす理由ではありません。
配当金の増加によって、投資家の投資意欲を刺激した結果、株価が上昇して株主資産が増加するというのが素直な流れです。
その他にも、さまざまな要因があります。気になる方は以下の記事をご参考ください。
企業目線のメリット
株価が上昇しても企業にはお金が入ってこないので、企業側の利益にはなりません。
では株価を上げる企業側のメリットとは何か、順に説明していきます。
宣伝効果
一部の投資家から評価され株価が上昇すると、今まで注目していなかった投資家も興味を持ち、関心が高まります。
そうすることで更に株価が上昇し、投資家だけでなく世間からも注目を集めることになります。
投資家は、いかに早く、株価が上がりそうな企業をみつけるかを競いあっているため、その初動は早く、それが利用できれば世間にもいち早く知れ渡ることになります。
広告とは違った宣伝効果が期待できるのです。
ブランド価値の向上
株価が上昇すると、投資家だけでなく世間からも評価されるようになります。
株価は『通信簿』や『成功の証』とも言われ、企業が扱う商品やサービスへの信頼が高まり、ブランド価値が高まります。
ブランド価値が向上することで、単価も上がり、企業へ更なる利益を生みます。
そうすると、それを評価した投資家から更なる注目を浴び、再び株価が上昇するという好循環が生まれるのです。
株価上昇は、企業が更なる成長を遂げるキッカケとなるのです。
社会的信用度の向上
先ほども挙げたように、株価は『通信簿』や『成功の証』とも言われます。なので、株価の上昇により、顧客やビジネスパートナーからの信頼を勝ち取ることができます。
ビジネスの輪が広がることで、今までに無いような新たな技術やサービスが生まれます。
それは1つの企業にとどまらず、経済全体の新たな価値を創造し、社会にインパクトのある革新、刷新や変革をもたらします。すなわち経済全体のイノベーションです。
社会から信用を得た企業を起点に、経済全体の発展に繋がっていくのです。
資金調達の容易化
株価上昇により、企業に対する信用が向上します。また今後の事業に対する期待も高まります。
信用や期待が高まれば、銀行からの借入が容易となり、また社債を発行しても良い条件でより多くの資金を調達できます。
企業側が資金を効率的に、そして迅速に集めることができれば、製品開発の速度も上がり、消費者にいち早く商品を届けることができます。
資金調達が容易になることで、経済発展のスピードも加速していきます。
優秀な人材の確保
株価は投資家だけでなく、仕事を探している優秀な人材にとっても、企業を評価するための「ものさし」となります。
単に企業の金銭的な価値というだけでなく、市場での評価や経済的な安定度を推し量れ、将来への成長期待の度合いもみてとれます。
それだけ株価は、複雑な要素が絡んで社会から評価された証(あかし)なのです。
優秀な人材の確保は、企業の競争力を高め、イノベーションを促進し、長期的な成功と発展には不可欠です。
人材確保のために株価上昇を意識する訳ではありませんが、株価上昇の恩恵として、優秀な人材が確保できることは確かです。
従業員のモチベーションアップ
株価の上昇は、従業員に対するストックオプションなどのインセンティブ制度を通じて、直接的に従業員のモチベーション向上に寄与します。
ストックオプションとは、従業員が自社の株をあらかじめ定められた価格で購入できる権利であり、株価が上昇すれば、従業員はその差額を利益として受け取ることができます。
これにより、従業員は会社の成長に直接貢献することで、自身の利益にもつながるという意識を持ち、より一層の努力をするようになります。
また株価は、社会における評価であるため、自分達の努力が世間に認められた証として、従業員のモチベーションアップに繋がります。
M&Aとして注目
株価の上昇は、企業の健全な財務状態や将来の成長見込みを、市場が評価しているサインとされます。このようなポジティブな信号は、他の企業にとって魅力的な買収対象となります。
株価が高い企業は、財務的に安定しており、買収後の統合によるシナジー効果が期待できるため、M&Aの候補として注目されるのです。
更に株価の上昇は、先にも解説したように、企業のブランド価値や市場での地位の向上を意味します。
そのため買収を通じて、そのブランドや地位を手に入れようとする企業が現れます。特に、同業種内での競争が激しい場合、株価が高い企業を買収することで、市場シェアの拡大や競争力の強化を図ることができるのです。
企業側の意識が重要
企業は単に、顧客にサービスを提供するだけではなく、環境保護、社会貢献、人権保護、法律遵守、情報開示、地域社会への貢献など、多くの社会的責任があります。
言い換えれば、市場からそれだけの期待やプレッシャーを受けることになるのです。
そのため、もし失敗や不正を起こせば、投資家からの期待が一気に失望へと変わり、急激な株価下落を引き起こします。
それは、ブランド力や信用を低下させること意味しており、メリットとは全く反対の悪循環を生み出します。
株価で市場評価を受ける企業には、それほど社会の模範となる責任があるのです。
まとめ
企業は株価上昇により、お金では無い様々な恩恵を受ける一方で、経済の発展に寄与するという社会的責任を負います。
それと同じく、それを評価する投資家にも役割があります。
投資家は、企業の社会的責任を評価しますが、正しい視点や情報をもとに監視し、企業に対してより良い社会的実践を促す責任があります。
これは、利益追求だけでなく、より良い社会を作るための重要なステップです。
株価は、単なる数字の変動以上の意味を持ち、それがもたらす社会的利益は計り知れません。
株価上昇が、社会全体の豊かさにどのように貢献していくのか、その判定を担っているのが投資家であり、経済発展の立役者の一人として、とても重要な存在なのです。
企業と投資家が共に歩み、その結果として社会全体が豊かになれば、理想的な未来と言えます。